カボチャの馬車は、途中下車不可!?
部長にまで揶揄われたくなくて、「今からお昼ですか? 遅いですね」って、無理やり別の話題を振ろうと、彼の手元に目をやった。
「あぁ、会議が長引いてさ。ようやく」
疲れたようにぼやいた部長がバックから取り出したのは、渋いブラウンのランチボックス。それは2段重ねになっていて、中身は——
「「うわぁあああ……」」
歓声が坂田とハモっちゃったわよ。
鶏の照り焼き、アスパラとトマトのサラダ、厚焼き玉子にひじきご飯……
彩りも栄養バランスも完璧な、なんて素敵なお弁当っ!
「おい、そんなに見られると……食べづらいな」
「もしかしなくても……それ、お手製、ですよね。部長の」
確認のために聞くと、あっさり肯定の頷きが返ってくる。
「ひょええ……」
そうなのだ。
部長がプロ顔負けの腕を持つ料理男子だってことは、得意先にも知れ渡ってる、わが営業部の常識。
「夕食の残り、詰めてきただけだぞ?」
ゆ、夕食?
平然とした口調に、目が慌ただしく泳いでしまう。
残業しながらコンビニおにぎり……とか、ここではちょっと言えない……恥ずかしすぎて!