カボチャの馬車は、途中下車不可!?
また電車が別の駅へ滑り込む。
ドアが開き、待ち構えていた人たちが車内へ……
え? わ、目黒だっ!
そこが目当ての駅であることに気づいて、乗り込んでくる人たちを「す、すみませんっ! 降ります!!」って、大慌てでかき分けて。
プラットホームへ飛び出した。
か、かっこ悪っ……
肩で息しながら、どっと汗だくになってしまったシャツをため息交じりに見下ろした。
音を立てて、電車は動き出し。
瞬く間にスピードを増して、小さくなっていく。
もしかしたら、彼はアプリで、新しい子を見つけたのかもしれない。
あの電車みたいに、もう次の駅へ、行ってしまったのかもしれない。
私を置いて。
大いにありそうだ。あの王子様なら。
たとえうまくいったって、結末なんてどうせわかりきってた。
夢中になって、飽きたら捨てられて? その後は?
みっともなく縋って、愁嘆場演じて。
仕事も手につかなくて、周りにも迷惑かけて?
三十路過ぎ、世間的にも大人だと認められる年齢の女子に、それはイタすぎるでしょう。
そんな風には、絶対なりたくない。
だから……きっとこれでいいんだ。
このまま忘れてしまおう。
「大丈夫。今なら……まだ」
強めに独り言ちて、電車の消えたプラットフォームを歩き出した。