カボチャの馬車は、途中下車不可!?

さらに驚いたことに、声の中心はなんと、私のデスクだった。
女子社員たちがぎっしり固まって、きゃあきゃあ異様な盛り上がりを見せてるのだ。

みんな……え、どうして帰らないの?

「えぇっあたしの名前、読めるんですかぁ!?」
「あてずっぽうだけどね。『羅生門』の『羅』と、『予知夢』の『夢』だろ。だからなんとなく」
「すっごぉい! 日本人なら、たいてい読んでくれますけど。ガイジンさんなのに、すごいすごいっ!!」
「実は僕、漢字オタクなんだよね」
「オタクなんですかぁっ!? あたしもですよっ!!」

女子の声の合間。
聞こえてきた男性の声に、かぁっと全身が反応した。

ちょっと、待って。
なんか、知ってる声が、聞こえるような……。


「あ、飛鳥さんだっ! おかえりなさーい!!」

ラムちゃんが私に気づいて振り返って。
その拍子に、輪の中心にいたその人と私の視線が、バチリと重なった。


「…………なんで?」

唇から洩れたのは、炭酸がぬけたソーダみたいな、腑抜けた声だった。


「おかえり、飛鳥」


輝くような笑顔を浮かべた王子様が、私の椅子に座っていた。
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