カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「ううん、私は……いい」
首を振ってから、ハッとした。
そもそも彼、思いっきり部外者じゃない。
普通に社内に入れてるこの状況、誰も何も言わないわけ?
若干不安を覚えながら見回せば。
新条部長は……いない。
視線を移して、部長席の隣、日下課長を見た。
「課長、あの……」
いいんですか何か言わなくても、って言おうとして……愕然。
「あ、真杉さん、おかえりぃ」
へらへら笑う課長の口元には、白いクリームが。
ダメだ、完璧に懐柔されてる……。
彼の魔力は、女子限定じゃないらしい。
もう感心するしかない。
ここはひとまず、私が外に連れて行かないと。
「すみません、今日はお先に失礼します」
彼の腕をつかむと、女子の輪の中から引っ張り出した。
きゃああっ!——突如沸き起こる黄色い歓声。
「ライアンさん、がんばってくださいね!」
「わたしたち、応援してますから!」
「ありがとう。期待に応えられるようにがんばるね」
ロイヤルファミリーかっ!
ひらりひらりと愛想よく手を振り返す王子様を、問答無用でフロアから連れ出した。