カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「炒めるのはもういいんじゃない? 土手って、つまりドーナツの形にすればいいんだろ?」
「うん、そうね。えっと……こう、かな?」
「いや、そうじゃなくて……あぁ違う! もっと均等に!」
「え、えっと……こう?」
「あぁっダメダメ! 飛鳥下手すぎ。ちょっとそれ貸して」

シャツの袖をまくり上げると。
私から奪ったヘラをひょいひょいって器用に操って、きれいな円を作ると、中心にスープを流し込んでいく。
その手つきは迷いがなくて、すごく慣れてるように見え……。

「ライアン、念のためもう一度聞くけど、ほんとに初めて、なのよね?」

「初めてだよ。でも作り方書いてあるし……ほら、こんな感じでもう食べれるんじゃない?」

「あー……はい」

促されるまま、自分用の小さなヘラを使って生地をはがして。
ぱくっと頬張った。

う……これは……
「おいしぃっ!」

口の中でじわっと広がって溶けていく味に、思わず頬を押さえてしまった。
ちょっと焦げた感じまで、完璧。

こういう鉄板ものって、焼き方でおいしさに差が出るのよね。

う。
なんか……日本人としてのプライドがズタボロだ。

いるのよね、生まれつき何をやらせても器用な人って。
鍋に連れてったら、今度は鍋奉行になるんだろうな。
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