カボチャの馬車は、途中下車不可!?
無理やり口角を上げて課長を見送って。
それから、ふぅうって息を吐いた。
気が付けば、ざわざわと人が行きかう、あわただしくも変わらない営業部の日常がそこにある。
こんな騒々しい中で考え事とか、私もすごいな。ちょっと呆れちゃう。
しっかりしなくちゃ。
ぺちっと両頬を叩いて、気合を入れた。
そこへ。
「毎度ー! フローリアでーす!」
聞きなれた声がした。
振り返ると……予想通り。
「真杉さん、毎度ありがとうございます」
ニコニコ笑いながら帽子をとって挨拶してくれたのは、毎日ライアンからの花を届けてくれるうち顔見知りになってしまった、花屋のお兄さんだ。
そういえば、昨夜言えばよかったな。もう花は贈らないでって……
あ……でも、みんなに恨まれるかもしれない。
あの朴訥とした眼鏡姿が萌える! っていつの間にか営業部にファン増殖中らしいから、このお兄さん。
「今日もご苦労様です」
苦笑しながら立ち上がって、アレンジメントを受け取るために手を差し出した。
なのに——あれ?
「こちらが、本日のお花になります」
いつも両手に余るほどのボリュームなのに、今日は赤いバラがたった一輪だ。
これまでと違いすぎるそのシンプルさに、「ん?」って首を傾げてしまった。