カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「離す? どうして?」
「くくるし……やめっ……死ぬぅ……」
冷ややかに見下ろす白皙の美貌とは対照的に、本宮さんの顔はみるみる真っ赤に変わっていく。
遠巻きに見ていた通行人の中、ちらほらと携帯を取り出してる人が見えて……
「私は大丈夫だからっ! お願いっ!」
その腕に飛びつき、夢中で「お願い」って繰り返した。
私のせいで、彼を犯罪者にしたくない——!
その気持ちが届いたのか……やがて。
「…………」
無言のままだったけれど、ライアンは手を離してくれた。
「おおお覚えてろよっ! お前、こんなことしてタダですむと思うなよっ!」
ベタなセリフだけど、私をカッとさせるには十分だった。
「もし彼を訴えるなら、私も証言させていただきます。あなたが何を言って、どんなことをしたのか、ちゃんと言わせてもらいますから。奥様にも聞いていただきましょうか?」
「っの、くそっ……」
口の中で何かを罵った本宮さんがドタバタと乗り込み。
タクシーは夜の街へ——消えていった。