カボチャの馬車は、途中下車不可!?

一時停止ボタンが解除されたみたいに、野次馬たちが歩き出して。
周囲のざわめきが戻ってきても、ライアンは何も言わなかった。

「あ……の、」

とにかく、お礼……言わないと。
助けてくれたんだし。

「あ、ありが——」
「どうして止めたの? 二度と同じことができないよう、わからせてやったのに」


感情を押し殺した声が言い、冷たい目が私を見下ろした。
その視線は、まるでこっちを責めているようで。

私も思わず、ムッと眉を寄せた。
「……暴力で解決なんて、してほしくない。一応、相手はクライアントだったし」

ハッと小さく彼が嗤う。
「日本人ってほんと、平和主義なんだな」

バカにしたみたいな言い方に、ドキリとした。

ライアンとあの赤毛の美女、そして私。
その間にくっきりと引かれた線……私がどうしても越えられないそれを、見せつけられた気がして。

「そ、そりゃ……私だって言うべきことはちゃんと言うわよ。でも、いつも楽しいことばかりってわけじゃないでしょ、仕事なんて」

どうしてだろう?
私はなんで、こんなに傷ついているんだろう?

「ああいう奴につきあってやることも、日本では仕事っていうわけ?」
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