カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「あんな人は、ほとんどいないから。彼はイレギュラーよ」
「それでも、飲みには行くわけだ。クライアントと。接待っていうんだっけ?」
「ちゃんとそれにはメリットもあるのよ? 食事しながらいろんな話ができるし……そうやって距離を縮められれば、名刺の情報しか知らない相手より、ぐっと信頼感も増すでしょ?」
「距離を縮めたいなら、ランチミーティングで充分だろう。だいたい、会社を出たらもうプライベートタイムなのに、どうしてそこまで仕事しなきゃいけないんだ? しかもあんな嫌な思いしてまで」
呆れたように肩をすくめて、大げさに首を振る。
なんだか……
ものすごくイラっとした。
どうせあなたのアフターファイブは、女性との約束で埋まってるんでしょう?
あの赤毛の美女とか?
そりゃ、仕事してる時間なんてないでしょうね。
「ほんと、理解できないね。日本のこういう習慣て」
突き放すみたいに言われて。
頭の中で、何かがプツンて切れた。
考える間もなく、私の口は開いていた。
「あぁそう、そうでしょうね。だってあなたは日本人じゃないもの。そりゃ永遠にわからないでしょっ! そんなに嫌なら、さっさとカナダに帰ればいいじゃないっ!」