カボチャの馬車は、途中下車不可!?
刹那。
昏い影が、サッと彼の顔に横切って——
とっさに口を噤んだ。
私、今……
何を……
自分の声、言葉。
その響きの冷淡さに、残酷さに。
気づいたそばから、身体が強張っていく。
でも飛び出したそれはもう、取り返しがつかない。
「ライア——」
「そうだね」
静かな声がした。
「その通りだよ。僕は、日本人じゃないからね」
変わらず澄んだその瞳を、私は直視できなくて。
「あ……の、今日は、電車で帰るから」
ふらつく足で後ずさる。
「送るよ」
「いい。電車、まだあるし」
「そう。じゃあ僕も一緒に電車で」
「私のことはいいからっ……早く帰ってあげれば? 赤毛の美女が待ってるんじゃないの?」
ぐちゃぐちゃな心ごと投げ捨てるように言って、踵を返す。
「赤毛、って……え、ちょ……飛鳥!?」
追いかけてきた声を無視して、人込みにまぎれ——改札へ駆け込んだ。