カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「飛鳥、もう少し寝てる?」
私を抱きしめたまま、ライアンは頭をずっと撫でてくれる。
「そういえば……ライアン、ずっとついててくれたの? どうして……」
改札の外で別れたはずよね、私たち。
どうやって彼は、事故を知ったんだろう?
「ん。あの後ね、飛鳥の後を追ったんだ。切符買ってたから、少し遅れて。そしたら、誰かが線路に落ちたって騒ぎになってて。実際には落ちそうになった、だけどね。まさかと思ったけど……」
長い指が、私の前髪をさらりとかき上げて。
「ホームで倒れてる飛鳥見て、心臓が止まりそうだった」
唇が羽根のように軽く、額に触れた。
「もう絶対、離さないから」
守られてる……
たくましい腕の中、ひな鳥のようにすり寄って目を閉じる。
その温かさに、全身の緊張が蕩けていく。
言わなきゃいけないこと、確かめなくちゃいけないこと……
その時は何もかも、頭からするりと抜け落ちていた。
◇◇◇◇
「今日は何時に迎えに来ようか?」
「プレゼンも近いし打ち合わせもあるから、何時になるか……。だから今日はもう——」
「ダぁメ。連絡くれないと、食事もしないで待ってるからね?」
な……
無茶苦茶なセリフに呆れかえって運転席を見れば、大きな犬がしっぽを振って……るわけはないんだけど。
イメージ的には似てると思う。
ニコニコしながら、さらっと脅迫するのやめてほしい……。