カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「だからっ心配とか、してなくて!」
「うん、わかってるよ」
「してないわよっ!?」
…………ダメだ。
一向に、彼のペースは乱れない。
最近彼の言葉が、態度が、やけに糖度を増している……のは、気のせいじゃないと思う。原因はたぶん、あの夜私が叫んだ言葉……
——早く帰ってあげれば? 赤毛の美女が待ってるんじゃないの?
病院で検査結果を待つ間、彼が恐ろしいほど機嫌よく説明してくれたところによると、くだんの美女の名はナディア・トレヴィス。
大学時代の友人で、現在は職場の同僚、そしてなんと……(信じ難いことに)男性なのだそうで。
——面白い奴だから、今度飛鳥にも紹介するよ。念のため言っておくけど、僕はバイセクシャルじゃないからね。だから、飛鳥がジェラシー感じる必要は全くないんだよ?
そう言って、ライアンは愛おし気な目を私に向けた。
つまり、彼は気づいてしまったのだ、私の言葉に潜む嫉妬に。
彼を、恋愛対象として意識してしまっている私に。
それで大いに気をよくして、その激甘っぷりを加速させてるってわけなんだけど……
はぁああ……
説得を諦めた私は、脱力しながらカチャカチャッとシートベルトを外した。