カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「はい、ちょっとぶつけただけなので。アザはまだありますけど」
当分スカートははけそうにない。でもそれだけで済んだんだから、奇跡よね。
「仕事とはいえ、もう足元危うくなるまで飲むなよ?」
「はい、気を付けます……」
小さくなって頷いた。
あの後お詫びに行った駅長室でも、駅員さんに散々言われた。
一歩間違えば大惨事、ってこともあり得たわけで……ほんとに、運がよかったと思う。
「そういえば部長、今朝はいつもより早くありません? 会議ですか?」
「あー……まぁ、な」
何気ない問いに、意外なほど歯切れの悪い答えが返ってきて。
私は隣を振り仰いだ。
「何かあったんですか?」
部長は珍しく眉を寄せて、困惑顔で頭をくしゃりとかき回す。
「ん……ま、いいか。いずれわかるしな。今日は、サイバーテロ対策の緊急ミーティングがあるんだ」
「サイバーテロ、ですか?」
「実は先週末、社内ネットワークに外部から侵入の形跡が見つかったらしいんだ」
「え……」
「たぶん今日明日中に社内メールで通達来るだろうけど、お前もデータ管理、十分注意しろよ。俺たちが扱ってる情報の中には、上場企業の株価左右するようなものも含まれてるからな」
なるほど。確かに……
「はい、注意します」
姿勢を正して、頷いた。