カボチャの馬車は、途中下車不可!?
帰り支度をしながら時計を確認すると、ちょうどお昼前だ。
そういえば柴田さんも外食派だったと思い出して、「ランチご一緒にどうですか」って誘ってみた。
「ベトナムのお話も聞きたいですし」
「あら、いいわね。じゃあおいしいオムライスのお店、紹介しようかな」
「オムライスですか! いいですねっ」
「1本メールうってから行くから、そうね、1階の本屋で待っててもらってもいい?」
「はいっ」
◇◇◇◇
サンビバレッジ本社が入る建物は、割と新しい商業ビルで。
1階フロアには、コンビニやカフェ、ショップなんかが並んで、かなりにぎわっていた。
その一角に広めの本屋を見つけた私は、雑誌コーナーを眺めながら、柴田さんを待つことにした。
こういう時って、条件反射的に自分が関わった広告を探しちゃうのよね。
これも職業病だなぁなんて独り言ちながら、ページをめくっていく。
あ、これこれ。
ふふふ、やっぱりこっちの写真で正解だったな。
にんまりしていると——隣に平積みされた料理本へ目が留まって、なんとなく手を伸ばしてしまった。
「『味よし! 見た目よし! シンプルステップの本格和食』……」
和食、かぁ。
そこで思い浮かべたのは——ライアンのこと。
事故の時もずっとついててくれたし、最近は送り迎えもしてもらってるし。何かお礼しなきゃとは思ってるんだけど。彼の金銭感覚って、私と違う気がして。
なかなか、物をプレゼントする勇気がでないのよね。