カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「うわ、おいしっ……!」

ふるふるっとスプーンの上で揺れるオムライスを口に入れるなり、私は身もだえた。

「気に入ってもらえてよかったわ」

「私史上、一位のオムライスかもです」
とろりと口の中で蕩けていく卵の濃厚な味をうっとり味わいながら、私は真っ白なファンを見上げた。

ものすごい偶然なんだけど。
柴田さんが連れてきてくれたのは、なんと青山さんと一緒に入った、あのカフェだったのだ。

「よくいらっしゃるんですか? ここ」

「ランチタイムは混んでるから、たまにだけどね」

あの時は青山さんをなだめることに必死で、食事どころじゃなかったからな。
こんなおいしいオムライスの店だったなんて知らなかった。

こういうお店って、雑誌編集者とか、大喜びするのよね。オムライスが嫌いな女子って、皆無だと思うし。誰か、今度連れてきてあげようっと。
心の中にこっそりメモした時。

「で? どんな男なの?」

目をキラキラさせた柴田さんが、切り出した。

「えーっと……」

見逃してもらえそうにない迫力に負けて。
私はしぶしぶ、気になる人がいるのだと打ち明けた。
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