カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「柴田さんも、ですか?」

「私は、もうそこを越したから。気楽なものよぉ」
あはははって軽やかに笑う。

「う、羨ましいです……」
肩を落とした私を見て、柴田さんが柔らかく言った。

「私は、悩んでる今の真杉さんが、羨ましいわよ?」

「え……?」

「ブレーキをかけた方がいいのかもしれない、引き返したほうがいいのかもしれない。でも、それができないほど、真剣に想っちゃってるってことでしょう?」

真剣に……想ってる、ライアンを?

「そんな相手って、めったに出会えるものじゃないと思うわよ?」

「……はい」

「この年まで独身の私が言うのもおかしいかもしれないけど……。恋愛なんて、始めていいか悩む前に、始まっちゃうものじゃない? 自分でストッパーなんてかけられないし、かけられる恋愛なんて、本気とは言えないって思うの」


悩む前に……始まっちゃうもの?

もう、始まってるんだろうか。
走り出してるんだろうか、私の気持ちは。

「人生って、実はそんなに長くないのよ? ぐだぐだ悩む前に飛び込んで、悩みながら進めばいいじゃない?」

不思議なくらい、その言葉は心の中にすとんと落ちて。
私は素直にうなずいていた。
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