カボチャの馬車は、途中下車不可!?
ビルの前に、停まってた、気がする。
全面スモークフィルムを張った、黒のワンボックスカー。
「えー……と、どうだったかしら。でも、あんな車、どこにでもあるでしょう?」
「……そう、ですね」
同意しながら、不格好な音を立てる心臓を必死の思いでなだめた。
違う?
違う車?
わからない。わからないけど……
そういえば、あの車。
もっと前にも……見たことあったような気がする。
……どこで?
どこで見たの?
ええと……そんなに昔じゃなくて……
「気のせいだったみたいです、すみません」
「そう?」
戦慄く口角を、無理やり持ち上げた。
気のせいよ。
気にしすぎ。
あんなありふれたタイプの。
そうに決まってる……
気のせい……でも、ほんとに?