カボチャの馬車は、途中下車不可!?

ビルの前に、停まってた、気がする。
全面スモークフィルムを張った、黒のワンボックスカー。

「えー……と、どうだったかしら。でも、あんな車、どこにでもあるでしょう?」

「……そう、ですね」
同意しながら、不格好な音を立てる心臓を必死の思いでなだめた。

違う?
違う車?

わからない。わからないけど……
そういえば、あの車。
もっと前にも……見たことあったような気がする。

……どこで?
どこで見たの?

ええと……そんなに昔じゃなくて……


「気のせいだったみたいです、すみません」

「そう?」

戦慄く口角を、無理やり持ち上げた。

気のせいよ。
気にしすぎ。

あんなありふれたタイプの。
そうに決まってる……


気のせい……でも、ほんとに?
< 238 / 554 >

この作品をシェア

pagetop