カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「おかえりなさーい飛鳥さん!」

夕方。
重たい足どりで社内に戻った途端、ラムちゃんの明るい声に迎えられて。
落としていた視線を、パッと上げた。

「た、だいま」

小さめの笑みだけを貼りつけて、営業部へと歩いていく。


柴田さんと別れて、その後ずっと。
誰かに見られてるような、あの感じがつきまとって集中できなくて。

道を歩けば、黒い車を探してしまって……


午後に回ったクライアント。
報告の数字を間違えたりして、何度も相手に怪訝な顔をさせてしまった。


やっぱり、事故のショックのせいかな。
ちょっと私、どうかしてる。
疲れてるのかもしれない。

週明けには、オオタフーズのプレゼンが控えてるし。
他にも、たくさん仕事はあるんだから。


もっとちゃんと、集中しないと。

余計な思考を振り落とすように頭を軽く振りながら、自分のデスクへ向かって——


ん? なんだろこれ?

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