カボチャの馬車は、途中下車不可!?
2. 婚活アプリ

道行く人の間から、サラサラストレートの茶髪、逆トライアングルのバンビ顔がチラチラとのぞく。

さすがにこの距離で、見間違いはないわよね。
あれはやっぱりわが営業部の後輩、青山紗英(あおやまさえ)だ。

えーっと。
確か今日って風邪で休んでるんじゃ……?

見たところ、足取りに乱れはなくて、顔色も……多少白いかなって気がする程度。いたって普通っぽい。
それどころか、ファストファッションとは一味違うオフホワイトのワンピ—スをまとう彼女は、オフィスで見る時よりずっと清楚で可憐に見える。

どう見ても、これから病院に行くところ、っていうのは無理がある。

これは、あれか。
あれよね。

その……デートに行くところで。
つまり、風邪は仮病で、仕事はずる休み、だ。

どどどどうしよう。
これは、見ないふりをしてあげた方がいいような気がする。
向こうだって気まずいだろうし、私だって嫌だ。

でも、幅広の歩道には今更隠れる場所なんてなくて。
あたふたしている間に、どんどん距離が縮まっていく。

やややばい。

だいたい、なんだって青山さん、仮病なんて。
メイクもファッションも結構派手めで、同期の女子社員からは反感買ってるらしいけど。
地味な事務仕事だって進んでやってくれるし、連絡事項だってメールですませずにデスクまで確認に来てくれるし。
仕事に対してはいつも真面目で……。
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