カボチャの馬車は、途中下車不可!?
『大河原は、明日から来週にかけて、出張なんですよ。そのせいで、プレゼンの日程も変更になったってわけなんですけど』
そんな……
「明日は、朝から出発されるんですか?」
『いえ、確か……実験の結果を確認したいってチラッといってましたから、朝イチなら社内にいると思いますが、でも——』
「でしたら! 明朝9時に、お伺いいたしますっ」
『真杉さん……』
「樋口さんにご迷惑はかけません。ただ、社内に入る許可だけ、いただけませんか? あとは、私が勝手にやった、ということにしますから」
受付でストップされたら、何もできない。
食い下がる私に、樋口さんの口からふぅうって長い息が漏れた。
『……わかりました。今回は僕にも責任ありますから。協力します。大河原の出発時間もチェックしておきます。少しでも遅らせられないか、聞いてみましょう』
「はいっ! よろしくお願いいたします!」
通話を切って、ドサッと椅子の背にもたれた。
……とにかく、明日まで時間ができた。
これが正しいかどうかはわからない。
でも、もう……引き返すことはできない。
だったら、進むだけだ。
私は勢いをつけて体を起こすと、斎藤さんに電話をかけた。
クリエイティブディレクターには同席してもらわなきゃいけないもの。