カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「……え、名前、だけ?」

松山先生の当惑しきった声が流れてくる。
『えぇ、どうせボツになる予定だから、別の仕事と抱き合わせで、名前だけ貸してくれないかって言われて。だから……実はもともと、スケジュールも埋まってるの』

ちょっと待ってよ。
何それ、どうせ没になる予定って……
つまり、斎藤さんは、最初からこの企画が通るとは思っていなかったってこと?

混乱する頭を、必死で解きほぐす。

——本宮さんからの紹介でさ。『力のある奴だから使ってやってよ』って言われちゃって。

頭のどこかで、日下課長の声が響いた。
そうだ。斎藤さんを使うことになったのは、本宮さんがごり押ししてきたから。
2人は……示し合わせていた?

『真杉さん?』

「っ……し、失礼しました。ちょっと考え事を」

そうか。本宮さんの余裕の理由は、これだったんだ。
CDをいつでも引き揚げさせることができるって。

まさか……彼は最初から、うちを落とすつもりで……?
でも、どうしてそんなことを?

『ごめんなさいね、なんだか大変なことになってるのかしら?』

おろおろと気弱な口調で続ける松山先生に、私は「大丈夫です」って答えた。
「また、ぜひ一緒にお仕事させてください」

やめよう。今は余計なことまで考えてる暇はない。
私は受話器を置くと、名刺ファイルを取り出して、猛然とスタッフのピックアップを始めた。
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