カボチャの馬車は、途中下車不可!?

フロアは今やしんと静まり返り、私一人の呼吸音だけがやけに耳障りに聞こえる。

誰もいない。
相談する人も、頼る人も、助けてくれる人も。

どうしよう。
どうしよう。

もし終わらなかったら。
できなかったら。

どうしよう……っ


せりあがってくる不安を飲み込むように、ぎゅっと口を引き結んだ時だった。

RRRRR……

この音は——内線?

「はい、営業真杉です」

誰だろう、こんな時間に。

『どうも、こちら警備室です。遅くまでお疲れ様です』

「あ、はい。お疲れ様です」
け、警備室?

『あのぅ、真杉さんあてにお客さんが見えてるんですがね。……どうしましょう。こんな時間ですが。お通ししてもいいですか?』

「客?」

『ライアン・ベッカー様とおっしゃる方で』


……は?
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