カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「おいしー……」
しみじみと漏らしてしまった。
せっかく買ってきてもらったんだから、と鮭おにぎりを手に取ったんだけど。
一口頬張るなり、自分がいかに空腹だったかに気づいて。
そういえば、お昼に柴田さんとオムライスを食べてから、何も食べてなかったのよね。
そりゃお腹もすくはずだ。
「日本のコンビニって、ほんとにミラクルだよね。品ぞろえは豊富だし、一つ一つのクオリティは高いし、スタッフは親切だしさ、世界に誇るべきだと思うよ」
隣のライアンはというと。
おにぎりを手に、さっきからしきりと日本のコンビニをベタ褒めしている。
「特に素晴らしいのはおにぎりだよ。見てごらん、この海苔の巻き方! こうして、こう……こう! ほら、パーフェクトな三角おにぎりが手を汚すことなく出来上がってしまう!」
「それ、そんなに感動するとこ?」
「するだろ、すごい発明だよ、これは!」
澄んだ瞳を、まるで子どもみたいにキラキラさせて。
コンビニおにぎりでそれだけ盛り上がれるって、すごいな。
ぷ、ぷぷっ……
やだ。笑いが止まらない。
「もうっ……笑わせないでよ」
むせそうになって、慌ててお茶で流し込む。
気が付くと、さっきまでパンパンに膨らんだ風船のように張り詰めていた気持ちが、嘘みたいに和らいでる。
彼といると、いつもそうだ。
いつの間にか笑ってて、気持ちが優しく、丸くなる——