カボチャの馬車は、途中下車不可!?

残業をあれほど嫌ってた人なのに、ほんとに最後まで付き合ってくれちゃうなんて……。
緩んだ頬を自覚しながら、そろそろと椅子を移動させて、彼を覗き込んだ。


太陽の光が注いで、黄金の髪へ白銀の輪を描き出してる。

まるで……戴冠してるみたい。そこには宗教画のような神々しさすらあって。
息をするのも忘れて、見とれた。


見つめているだけで、こんなにも胸が苦しい。

苦しいのに、いつまでも見つめていたい。
触れたい……
触れてほしい……


——好きな人の力になりたいって思うのは当然だろ?

ねえ、あの言葉は……ほんと?


こみ上げる切なさに、彼へと伸ばしかけた手をきゅっと握り締めた。
この気持ちは……もう……

——始めていいか迷う前に、もう始まってるものじゃない?


そうだ。そうなんだ。
もう、始まってたんだ。気づかないふりをしてただけ。


『好き』

音にならないほどの小さな声で、私はそっと、想いを告げた。
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