カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「着いたよ」
「うん……ありがと」
虎ノ門まで送ってもらった私は。
SUVの助手席に座ったまま、何度も深呼吸した。
今更だけど……かなり無謀なことをしてるって思う。
日下課長には昨夜メールで報告しておいたけれど、やっぱり午前中に戻るのは無理らしくて。
つまり、私が一人で乗り切るしかないってことで。
夢中になって作業してた時には感じなかった恐怖が、押し寄せてくる。
会ってくれるだろうか? 大河原部長は。
名刺すら、なかなか受け取ろうとしなかった人なのに。
プレゼンをすっぽかした代理店の話なんて、聞いてくれるだろうか?
怖い……
膝の上で震える両手を握りしめて、膨れ上がる緊張を抑え込んだ。
ふっとその手に影が落ち——顔を上げると。
シートベルトを外したライアンが、私の方に身をかがめていた。
「ちょ、……な、にっ……?」
間近にある唇に目が吸い寄せられてしまい、ドギマギしてしまう。