カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「着いたよ」
「うん……ありがと」

虎ノ門まで送ってもらった私は。
SUVの助手席に座ったまま、何度も深呼吸した。

今更だけど……かなり無謀なことをしてるって思う。

日下課長には昨夜メールで報告しておいたけれど、やっぱり午前中に戻るのは無理らしくて。
つまり、私が一人で乗り切るしかないってことで。

夢中になって作業してた時には感じなかった恐怖が、押し寄せてくる。
会ってくれるだろうか? 大河原部長は。

名刺すら、なかなか受け取ろうとしなかった人なのに。
プレゼンをすっぽかした代理店の話なんて、聞いてくれるだろうか?

怖い……


膝の上で震える両手を握りしめて、膨れ上がる緊張を抑え込んだ。


ふっとその手に影が落ち——顔を上げると。
シートベルトを外したライアンが、私の方に身をかがめていた。

「ちょ、……な、にっ……?」

間近にある唇に目が吸い寄せられてしまい、ドギマギしてしまう。
< 273 / 554 >

この作品をシェア

pagetop