カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「お待たせしました」
絶妙のタイミングで運ばれてきたコーヒーを一口飲んで。
私はおもむろに、口を開いた。
「別に……心配しなくても、会社に言ったりなんてしないわよ? 私もしょっちゅうあるもん、会社行きたくないなって時」
「…………」
うーん……だめだ……会話にならない。
何か話の糸口を見つけないと。
ひとまず、もう少し当たり障りのない話をつづけた方がいいのかな……
仕事とは関係ない……恋愛の話とか?
今日はデートなの? って、それは直球すぎか。
頭の中でぐるぐる考えて、途方に暮れていたら。
「……めようかと……」
かすかに、彼女の唇が動いた。
「え? 何?」
「わたし、会社……辞めようかと、思ってて」
え……えぇえ!?
「いや、その……えっと、なんで? ほんとに、私言わないよ?」
そもそも仮病がバレたくらいでクビになんてならないと思うけど。
「青山さん、ずっとがんばってきたじゃない」
去年アシスタントからやっと昇格して、担当クライアントも増えて。
まさにこれからって時じゃない、ってつなげようとして、ぐっと言葉を飲み込んだ。
彼女の目から、再び涙があふれ始めたから。
「……ぅ……っすみません、ご迷惑っ……」
その様子に、「何かあったの?」と、私は少し緊張しながら椅子に座りなおした。
「……結婚、……するんです」