カボチャの馬車は、途中下車不可!?
……ダメだ。
我慢しなくちゃ……っ
ここは、クライアントの社内なんだから。
膝をついて企画書を拾いながら、こみ上げる涙を必死で抑えた。
「俺とヤッとけばよかったのに。そしたら少しは、力貸してやったのになぁ?」
「なっ……」
「でもカン違いするなよ。三十路過ぎの身体なんか、興味ないからな? ほんのちょっとだけ、チャンスくれてやってもいいかなって、ホトケゴコロが動いただけなんだから」
何よそれっ……
「大体、30過ぎて独りとか、イタすぎるんだよなぁ。どうせあんた、あれだろ、早く結婚したーいって、婚活パーティ行きまくって、みっともなく男のケツばっかおっかけてるから、こういうミスすんじゃないの?」
「私は、日程変更のお話は、お聞きしておりません」
「ははっ……負け犬の遠吠えかよ、みっともねぇなぁ。相当焦ってんだろう? 結婚もできない、子どもも産めない。もうあんたには仕事しかないもんなぁ」
きつく噛んだ唇から、血の味が広がっていく。
「家庭をもってこそ一人前。かわいそうだけど、まぁこれ、世の中のジョーシキだし」
だからっ! いつの時代の話よそれっ……
「家庭持つとさぁ、やっぱ責任感て違ってくるわけ。大黒柱っていう自覚ね。連絡ミスなんて、しようと思ったってできねぇよ。わかる? まぁ独りモンにはわかんねえかぁ! あははははっ」
「っ……」