カボチャの馬車は、途中下車不可!?

情けない悲鳴は、ライアンのものだ。

とっさに手に触れた本——『シンプルステップの本格和食』だ——を、彼の顔面にバンッと押し当ててやったから。


「だから、ご褒美。ちゃんと手料理ごちそうしてるでしょ? 喜んでよね」


う。

か、かわいくない……
自分でもうんざりするくらい、かわいくないっ。


ビクビク後ろを伺うと、


「つ、つぶれた……ひどいよ飛鳥……」
涙目になりながら、鼻を押さえてる。

「ちぇっ、ほんとに君は手ごわいなぁ」




素直に好きって、言えたらいいのに……。


私はまだ、その言葉を伝えられていなかった。


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