カボチャの馬車は、途中下車不可!?

たった一度のキス。
それだけで、心も体も、何もかも鷲掴みにさらわれそうになった。
だから、それだけでわかってしまった。

彼の経験値が相当なものだって。

唇を離してこちらを見下ろした、彼の瞳。
悠然と。私の反応を観察するような、楽しむような眼差し。

憎らしいほど、その態度は余裕たっぷりで。
F1ドライバーとペーパードライバーくらいに、
テクニックも経験もスペックも。
彼と私は、何もかもが違いすぎた。


彼は、危険。
頭の中で誰かが警告する。

早くここから逃げなくちゃ。
彼が、バスルームから出てくる前に。
天使の仮面をかぶった悪魔に、囚われてしまう前に。


ああぁもう!
一体全体、どうしてこんな面倒なことになっちゃったんだろう。


私はため息とともに、頭の中で今日という日を巻き戻した。
そう。
なんか今日は、朝からおかしかったのよね……
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