カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「自信たっぷりのところ悪いけど」
泣きそうになってる自分を誤魔化したくて。
口から飛び出したのは、やけっぱちみたいな乱暴な言葉だった。
「私、前に言ったでしょ? あなたなんて、タイプじゃないって。世の中には、あなたより素敵な男性がごまんといるの。自分が絶対選ばれるとか、うぬぼれない方がいいんじゃない?」
言い放ってすぐ、後悔した。自己嫌悪に泣きたくなる。
あぁもうっ……なんで私、こんなことしか言えないの——
「……いるの? 誰か」
ぽつりと響いた声は、感情を欠いた、ざらついた声音で。
らしくないそれに私が顔を上げるのと、彼が私の手首をつかむのは同時だった。
強引に引きずられた身体は、一瞬の後、冷蔵庫に強く押し付けられていた。
「い、痛っ……」
「僕の他に、いるの? 誰か、男が」
優しさも明るさも影を潜め。
未知の激しさと昏さを秘めた双眸が、私を逃すまいと見据えていた。
「な、なによ、そんなマジメな顔似合わな……」
恐怖すら覚えるような予想外の反応に、冗談めかした言葉が尻すぼみに消えていく。
「答えて飛鳥。いるの? まさか……あのハンサムな上司?」
上司? もしかして……それって。
「……新条部長のこと?」
直後、彼の顔にカッと感情の波が横切って。
ぶたれるっ——……?
反射的にギュッと目を閉じた私の身体は、次の瞬間、ふわりと宙へ浮いていた。