カボチャの馬車は、途中下車不可!?
背後からかけられた声に、ビクッと体が揺れた。
この、声は。
「ぶ部長っ……」
涙をさっとぬぐいながら、振り返る。
「お、お疲れ様です。部長も休日出勤ですか?」
「あぁちょっとね。真杉は……なんか急ぎの案件抱えてたっけ?」
近づいてくる部長に、私はとっさに目をそらした。
泣いてたことは、知られたくない。
「はい、ちょっと確認したい資料があって。でも、もう帰るところなんです」
できるだけ明るく言って、脇をすり抜けようとして——グイっと強く、腕をつかまれた。
「……どうした? 何かあった?」
いつもと違う声に、ドキリとする。
気づかわし気な声。
本気で、心配してくれてる声……。
鼻の奥がツンとして。
たまらず、きゅっと眉を寄せると。
「あ……悪い。痛かったよな」
部長は焦ったみたいに手を放して、私を覗き込んだ。
「どうした、彼氏と喧嘩でもしたとか?」
おどけた口調で言い、私の頭をくしゃくしゃっと撫でる。
その優しい重みと温度に、せき止めていた何かがあふれ出す。
「っふ……」
もう、ダメだ……
深く考える間もなく、私は部長にすがりついて。
ボロボロって涙をこぼしていた。