カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「同情で部下にこんなことできるほど、俺は図太くないな」
そう言うと肩に垂れた私の髪を一房、手に取った。
そのままそこへ、口づける。
「ずっともどかしかったよ。上司と部下っていう距離が」
ささやいて——頬を傾けていく。
私はカチンって固まりながら、近づく唇を凝視することしかできない。
まさか。
き、キス……?
嘘でしょう?
部長、まさか本気で……?
ふわりと。
落ち着いたウッディ系の香りが鼻孔をくすぐる。
決して不快じゃない、上品な香りなのに。
反発する磁石みたいに、身体は勝手に離れたがる。
やだ。
嫌だ。
違うと。
この『感じ』は違うと——
ぞくりと、強烈な違和感に突き動かされる。
助けて。
助けて……ライアン……っ
「だ……だめぇっ!!」
思いっきり両腕に力を入れて、分厚い胸板を突き飛ばしていた。