カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「え?」


「さっき、心の中でお前は誰を思った? 誰の名前を呼んだ?」


「あ……」


そうだ、私……彼の名前……

じゃあ今のって、わざと?



「飲むか」
部長がニッと笑った。

「……はい?」


「おごってやる。愚痴にも付き合ってやるぞ」

「え、あの、でも部長は仕事あるんじゃ……」

「大事な部下を、そんな顔で帰らせたくないからな」

ポンポンって軽く頭を叩かれて。
再び、ぐぐって、熱いものがこみ上げてくる。

「私……部長の部下で、ほんとによかったです」

「おいおい、今更だろ」


大らかな笑い声に、心の中がほかほか温もって。
自然と唇が綻んでいた。
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