カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「こちらが車を運転していた男ですが、ご存知ではないですか?」
総合病院の待合室。
患者の姿もなく閑散とした薄暗いロビーに、私と新条部長は並んで座って、警察から事情を聞かれていた。
見せられた写真に写っていたのは、茶髪の青年。
ピアスをじゃらじゃらつけた、まだ10代にも見えるコで、まったく面識のない顔だ。
「知りません」
すぐに首を振ったんだけど。
部長は「ほんとに知らないのか?」って眉をひそめてる。
「まっすぐ、お前の方に向かっていったように見えたんだが……」
ドキリとした。実は私も、そんな風に感じたから。
「いやぁ、本人も飲酒運転を認めてますし、反省もしてますし、事件性はないと思いますよ」
中年の警官に言われて、私は「わかりました」って自分を納得させるように頷いた。
以前の駅でのハプニングがチラッとよぎったけど。
あれから特に何も起こってないし……関係ないわよね?
「まぁ確かに……」
ふと警官が髭の浮いた顎をなで回しながら、つぶやいた。
「時間帯が妙ではありますがね」
「時間帯?」
「まだ宵の口にもならん頃でしょう。そんな時間から、運転が危うくなるくらい飲むってのもねぇ」
あ……確かに。
私たちがビルを出たのは、5時を過ぎたばかりで。外はまだ、昼間のように明るかった。