カボチャの馬車は、途中下車不可!?
——都築に言えば、鍵開けてくれるから。先に入っててくれていい。
昨夜の言葉が、まだはっきりと耳に残ってる。
もしかして、あの「都築」って……この人のことなんじゃない?
だったら彼は、知ってる?
昨夜どんな人がライアンの部屋を訪ねたか。
せめて、女性だったかどうかだけでも……
こくっと息をのみ、冷房のせいで冷えきった指先をこすり合わせた。
聞いたら、教えてくれるだろうか?
お客のプライベートな情報なんて、教えてくれないかな。
「あの、3701号室、なんですけど……」
すると。
都築さんは驚いたように一瞬、その目を開いた。
……え? 何?
私が不思議そうな顔をしたからだろう。
彼はすぐ、慇懃な笑みの下へ、それを押し隠してしまった。
「はい、エグゼクティブフロアのお部屋ですね。そちらが何か?」
「昨夜、なんですけど」
「昨夜ですか……申し訳ありません、私はプレミアムフライデーのイベントにかかりきりでしたので、客室のことでしたら、別の者に——」
「いえ、そうじゃなくてっ……昨夜」
あなたはそこへ、誰かを案内しましたよね——