カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「あの……」
カサついた唇は、震えるばかり。
たった一言なのに……
「……いえ、なんでもありません。大丈夫です。あと少しだけ、こちらで友人を待たせていただきたいんですけど、構いませんか?」
結局私は、何も聞けなかった。
「もちろんです。何かありましたら、いつでもお声がけください」
「はい、ありがとうございます」
優秀なホテルマンらしく、都築さんはそれ以上追及することなく離れていく。
一分の隙も疲れも見せないキビキビしたその姿が視界から消えてしまうと、しゅううって全身から力が抜けていく。
ソファにぐにゃりと沈み、自分をあざ笑う。
私は……臆病者だ。
ライアンが好きで、気持ちを伝えるって決めたくせに。
彼がもし女性と会っていたら……そう考えただけで、もう怯えている。
決意がぐらつく。
なんて、弱い人間なんだろう——