カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「ら、イアン? なん、で……?」
Tシャツとジーンズ。
初めて見る、ラフな私服姿の彼だった。
こういう格好も似合うな——
なんて。ぼうっと立ち尽くしていたら。
ぎゅううっ……
きつく、抱きすくめられた。
「っ……ちょ、え、な……に?」
訳がわからなくて身じろぐ私を戒めるように、ますます彼の腕に力がこもっていく。
骨のきしむ音が聞こえそうなくらいの抱擁に、仕方なく抵抗を諦めた。
「ライアン……?」
「どこに……行ってたんだよ」
頭の上で、小さな声がした。
「……え?」
「心配、した。ものすごく」
「し、心配?」
「昨夜、乱暴にしちゃったから……謝ろうと思ったのに、メッセージは全然既読にならなくて……会社に行ったら、近くの人が事故の話してて。聞いてるうちに、だんだんそれ、飛鳥じゃないかって気がしてきて。病院に行ったら、もう帰ったって言われて……なのにマンションには帰ってないし……電話は通じないし……」
ぼそぼそって。
いつもの彼からは想像もできないような、弱りきった声だった。