カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「えっと……ごめん。携帯のバッテリー切れちゃってて」
「事故って、ほんとに飛鳥だったの?」
「う、うん。飲酒運転の車が突っ込んできて……でも、全然平気」
「ほんとに? どこも、ケガはない?」
言いながら、彼の手が私の体を、確かめるようにペタペタと撫でた。
頭を。肩を。背中を——
その手にいやらしさはなくて、ただただ怯えたように震えていることに気づいて、胸の奥がジリジリと温もっていく。
本気で心配してくれたんだって、伝わってきたから。
「もしかして……私を待って、ずっとここにいたの?」
こくりと頷く気配。
それはつまり。
私がホテルのロビーで待ってた間、彼は私のマンション……って。
うわ。見事なほどにすれ違い。
私たち、何やってんだろう。
なんだかおかしくて、ププって吹き出しちゃった。
「何で笑うの?」
不貞腐れたように聞くライアンへ、緩んだ頬のまま、視線を合わせた。
「あのね、私、ホテルにいたの」
「……What?」
一気に周囲の温度が氷点下に下がった、ような気がした。