カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「へぇ、そう」と冷ややかに彼がつぶやいて。
私は自分が言い方を間違えたことに気づいた。
「あ、違うの! ちがっ……」
「誰と一緒だったの?」
ガシッと両肩をつかまれ、剣呑に睨まれて、急いで首を振る。
「ち違うんだってば! ホテルって、シェルリーズだから!」
「……は? シェルリーズ? ……それ、……え?」
「ロビーで、ライアンが帰ってくるの、待ってた」
言葉が、気持ちが、彼に伝われと祈りながら。
一言一言、大切に口にする。
戸惑うように揺れていた瞳が、やがてすべてを飲み込んだように、大きく見開かれた。
「えっと……飛鳥はホテルで僕を待ってて、僕はここで飛鳥を……つまりそれ……ええと……」
「すれ違っちゃったみたいね」
「すれ……な、んだよそれ……」
ガクッて倒れ掛かってきた大きな体を、広げた腕で受け止めた。
まるで気持ちまでぴたりと重なり合ったような心地いい重みに、うっとり目を閉じる。
「バカみたいだ」
「うん、そうね」
くすくすって。
ひとしきり2人で笑った後。
「で? なんだったの?」
ライアンが甘えるように私の頭に顎を乗せたまま聞いてきた。