カボチャの馬車は、途中下車不可!?
私の視線に気づくと、そのままくるっと明後日の方向を向いてしまう。
「……生まれて初めてだよ。誰かに振り回されて、こんなに余裕ないなんて」
途方に暮れたようなつぶやきが聞こえた瞬間。
きゅんっと——胸の奥が疼いた。
どうしよう……う、うれしい……
心臓をぎゅっと服の上から押さえて、突き上げるような衝動をなんとか耐えた。
もういい。
もう充分だ。
彼が今、私のことをちゃんと想ってくれてる。
それだけは、真実だって信じられる。
だから——
私は、ぐっと爪先立って彼のTシャツをつかみ、思いっきり自分の方へ引き寄せた。
そして。
「好き」
ささやいた唇を、彼のそれにそっと重ねた。