カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「月1くらいで来るんだ、このあたり。海見るのが好きでさ」
そう言う彼も、リラックスして楽しそう。
「涼しくなったら、サイクリングもおすすめだよ」
「サイクリング?」
「そう、海を見ながら走るんだ」
「へぇ、気持ちよさそうね」
そういえばカナダってアウトドア大国だっけ。
意外にアクティブな方が好きなのかも。
散財デート、とかイメージしちゃって、申し訳なかったな。
心の中で謝った時……彼がピクピク、肩を震わせていることに気づいた。
「どうかした?」って首を傾げると。
「飛鳥はさ、自転車乗る前に十分準備しておかないとね」
笑いを堪えながら言う。
準備? 何の?
私の心の声を読んだのか、ライアンがニヤリと笑みを浮かべた。
「翌日、凄まじい筋肉痛になる」
「し、失礼ねっ……私も普段から運動くらいっ……」
「へえ? ちなみに週何回、何時間くらい?」
「週……う。……うぅ……イジワルっ」
口ごもって睨む私を見て、ついにライアンは「ぶぶっ」と吹き出した。
「あはははははっ……」
「何よっ……そんなに思いっきり笑わなくてもっ!」
むぅっと膨れていた私だったけど。
すぐにまぁいっかって、結んでいた唇をほどいた。
本格的な夏の始まりを予感させる空は、どこまでも青く、明るくて。
そして、彼が隣で笑ってる。
それだけで、こんなにも満ち足りた気分になってしまう自分に、驚いた。