カボチャの馬車は、途中下車不可!?

あれは、一体どういう意味だったんだろう?
聞き違い、だったんだろうか?

水族館の後、江の島まで足を延ばした私たち。
食べ歩きで小腹を満たしながら、私は何度も、さっきのシーンを思い返していた。

あの目には、見覚えがある。
以前会社の前で見かけた、あの目だ。

空を行く鳥を追っていた、あの焦がれるような、切なげな……


ひょっとして彼は、飛びたいんだろうか。

どこへ? 
あるいは……どこか、から?

名物コロッケを頬張りながら「激ウマですね」ってコメントし、売店のおばちゃんを大喜びさせてる彼は、もういたって普通だったけど。

本当に、これが彼のすべてなの?
私の知らない、彼がいるんじゃないの?

だって私は、彼のことをまだ何も知らない——


「龍恋(りゅうれん)の鐘? なんですか、それ」


彼の声がした。
おばちゃんから、何かを聞いたらしい。

「あれま、知らないの? 恋人と一緒に鳴らすと永遠に幸せになれるっていう、言い伝えがある鐘なんだよ」

「へぇ、そんなロマンチックなところがあるんだね」
< 367 / 554 >

この作品をシェア

pagetop