カボチャの馬車は、途中下車不可!?
あれは、一体どういう意味だったんだろう?
聞き違い、だったんだろうか?
水族館の後、江の島まで足を延ばした私たち。
食べ歩きで小腹を満たしながら、私は何度も、さっきのシーンを思い返していた。
あの目には、見覚えがある。
以前会社の前で見かけた、あの目だ。
空を行く鳥を追っていた、あの焦がれるような、切なげな……
ひょっとして彼は、飛びたいんだろうか。
どこへ?
あるいは……どこか、から?
名物コロッケを頬張りながら「激ウマですね」ってコメントし、売店のおばちゃんを大喜びさせてる彼は、もういたって普通だったけど。
本当に、これが彼のすべてなの?
私の知らない、彼がいるんじゃないの?
だって私は、彼のことをまだ何も知らない——
「龍恋(りゅうれん)の鐘? なんですか、それ」
彼の声がした。
おばちゃんから、何かを聞いたらしい。
「あれま、知らないの? 恋人と一緒に鳴らすと永遠に幸せになれるっていう、言い伝えがある鐘なんだよ」
「へぇ、そんなロマンチックなところがあるんだね」