カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「ややややっぱり、やめよう?」
つないだ手を引っ張ると、「なんで?」って真顔で返されて口を閉じる。

なんで、って言われても……

海を望む小高い丘になったそこを、ぐるりと見渡せば。
日曜だからなのか、若いカップルが結構いるのよ。

まさかこんなにギャラリー多いなんてっ!

この中でリンゴンとか。これを恥ずかしいと言わずして、なんとするのよ。
ただでさえ、あなた目立つんだからねっ。

「ね、ねぇ混んでるみたいだし、あの——」
「あれ……あそこ、なんでパッドロックがあんなにたくさんついてるの?」

鐘の脇、金網に鈴なりに取り付けられた南京錠に気づいた彼は、「もしかしてこれってさ」と、ニヤリ。
「ララライアン、あっち、あっちに並ぶみたいっ」

上ずった声で言い、無理やり彼を引っ張った。
鐘鳴らすだけでも恥ずかしいのに、この上、愛を繋ぎとめる鍵とか、絶対無理無理!

ブツブツ口の中でつぶやいていると。
ぐいっと腰を抱き寄せられた。

「飛鳥って、すごくシャイだよね。そういう所も、かわいくて好きだけど」

「……っ……」

だから、そういう……ことを、なんでさらっと……
赤くなった顔をそむけると、「ほら、次、僕たちの番だよ」と、笑い交じりの声がする。

うう……もう、逃げられそうにない。
観念した私は、彼と並んで鐘の下に立ち、うつむいたまま紐へ手を伸ばした。

「飛鳥、顔、上げて?」

言われるまま視線を上げて——ギョッとした。
もうすっかりその気な彼が、色っぽい目で見下ろしていたから。
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