カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「じゃあ、ちょっと待っててね。すぐ取ってくるから」
運転席のライアンに声をかけ、車から降りた。
そのまま小走りでマンションに入る。
——今夜はどうする? 飛鳥の部屋に僕が泊まる? それともシェルリーズに来る?
東京へ戻る道すがら、当然のように聞かれて。
泊まる以外の選択肢がないことに唖然としながらも、拒めるはずなんてなく。
後者を選んだ私は、今から着替えを取りに行くところだ。
持っていくものを頭の中で挙げながら、エレベーターから降りた。
アメニティはホテルにあるからいいけど。
明日そのまま会社に向かうとなると、出勤の用意もしなきゃ。
ノートパソコンとファイルと、名刺入れ……もちろん、社員証もね。
足取りも軽く、鍵を開けて三和土で靴を脱ぎ。
あがろうとして——
え……?
足が止まった。
違和感。
そう、それ。
見慣れた小さな玄関を見渡す。
ううん。
どこにもおかしいところはない。
なのに……どうしてだろう。
そこにはいつもと違う、何かが漂っていた。