カボチャの馬車は、途中下車不可!?
19. 疑惑
「はい、ハーブティーだよ。飲める?」
「ありがと……」
キングサイズのベッドにも等しいゆったりしたソファの上、抱えていた膝を伸ばして座りなおすと、ライアンからカップを受け取った。
ふんわりと頬にあたる湯気のぬくもりに、強張っていた口元が少し緩む。
「ごめんね、ホテルまで押しかけちゃって」
「いや、どうせ泊まってもらう予定だったし」
隣に腰をおろし、「少し落ち着いた?」って肩を抱き寄せる彼へ小さく笑みを返して、その広い胸に頬を寄せた。
——しかしですねえ。何もなくなっていないわけでしょう? 預金通帳も、現金も家電類も、全部無事なんですよね?
蘇ってくるのは、さっきまでの警察とのやりとりだ。
——それは……そうですけど。でも、確かなんです。確かに、誰かがうちに入ってっ……
——ラグマットが濡れてたってだけでねえ。出かける前に、自分で水でもこぼしたの、忘れてるだけじゃないですか?
——今日のことなんて、忘れるわけないじゃないですかっ!
——とにかく、何も被害がないのに、警察は動けませんよ。何か新しい事実が見つかったら、またご連絡ください。