カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「じゃあ、カンパーーーイ!!」
「カンパーイっ!!」
カチャカチャッ!!
あちこちでグラス同士がぶつかり合う賑やかな音が響いて、わっと笑い声が弾けた。
「最近どうよ?」
「やっぱネットに食われるな、紙媒体は。雑誌なんて、もうジリ貧て感じでさ」
「知ってる? A出版、危ないらしいわよ」
「やっぱなぁ。紙質落としたから、そろそろだと思ってた」
「大手はなんとかカタイんじゃない? ヴィラは逆に伸びてるくらいだし」
「あそこはタイアップがうまいんだよな」
新宿の居酒屋、広い座敷席を貸切って行われた年に一度の社内同期会。
久しぶりに全国から仲間が集うとあって、のっけからハイテンションだ。
私は懐かしい気持ちで、盛り上がる会場を見渡した。
遠方のメンバーに上京してもらうのは年々難しくなって、この会も縮小傾向。
中でも女性は寿退社したり、育休取ったりで、減る一方だ。
おめでたいことだけど、会えなくなるのはやっぱり寂しいな。
「聞いたわよ、真杉さん! あのオオタフーズの仕事、とったんだって?」
「やるじゃん! おめでとう」
「ありがとう!」
新人研修時代の失敗談からプライベートな近況報告まで。
1年ぶりっていうこともあって話題は尽きなくて、話し出したらもう止まらない。
異業種交流会とか外部の集まりにも参加するけど、社内で同期っていう、この気安さは特別なのよね。
最近は引きこもりがちで、今日も直前まで迷ってたけど、来てよかったな。
浮かれた気持ちのままに、私はジョッキを傾けた。