カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「飛鳥、ここいい?」
自分のグラスをもってやってきた美弥子に、「もちろん」って場所を空ける。
「その後、何かわかった? 泥棒のこと。もう2週間くらい経つでしょ?」
声を潜めて聞いてくる美弥子に、「うーん」って口ごもった。
「業者の話ではね、盗聴器とかは見つからなかったの」
「なんだ、よかったじゃない」
「よかったのかな……」
ジョッキについた雫を指でたどりながら、肩をすくめた。
だって、侵入の目的はなんだったのか、結局わからないままだから。
逆に、盗聴器なりなんなり、見つかった方がすっきりするのに、とすら思ってしまう。
「まぁ、あんなに頼もしい王子様がついてるし、大丈夫だとは思うけど」
「あはは……そうだね」
私は素直に認めた。
ほんとに、彼には感謝してる。
こうやって安心して普段通りの生活が送れているのも、彼のおかげだから。
会社への行き帰りはもちろん、休日の買い物にも付き添ってくれて。
いつもそばにいてくれて。
夜になれば、当然のようにその腕に抱いて、不安なんか感じる暇もないくらい愛してくれる。
まるで繭に包まれた蚕のように。
私は、すべてのものから守られていて……
こんな時に不謹慎かもしれないけど、幸せすら感じている自分がいて。
時々忘れそうになってしまう——薄い膜を隔てた外にあるかもしれない、危険を。