カボチャの馬車は、途中下車不可!?
トラブルでもあったのかな。
それにしたって、珍しい。
どんなことが起きたって、動じる部長なんて見たことないのに。
一言もしゃべらないまま、私たちはエレベーターに乗り込んだ。
そこで初めて、部長がカバンを手にしていないことに気づいた。
つまり……今出社したんじゃない、ってこと?
我慢できなくなって尋ねようとして——口をつぐむ。
ピリピリした雰囲気のまま、部長は固くその唇を引き結んでいて。
答えてくれそうな気がしなかったから。
一体何があったんだろう?
胸の中へ立ち込めていく不安と緊張に身をすくめながら、私はただ刻々と変っていく階数表示をじっと見上げた。
チン——
着いた先は、一般社員はめったに足を踏み入れることのない上階。役員クラスの執務室が並ぶフロアだ。
部長はとある部屋の前で立ち止まり、私の背中に手を当てた。
「俺は、お前を信じてる。ただ知ってることを、ありのまま話せばいいから」
え……っと、どういうこと?
訳が分からず視線を揺らす私を力づけるように頷くと、部長は目の前のドアを軽くノックした。
「真杉を連れてきました」
え? え?
何……何なの?