カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「なんであなたにそんなこ——」
「彼は、危険な男よ」
「き、けん?」
ライアンが? 何言ってるの、この人。
「まぁ、そこがたまらなくイイんだけどね。でも、あなたみたいな平和ボケした国で育ったのほほんOLじゃ、手に負えないわよ」
何……それ。私、なんかバカにされてる?
この人が、彼の何を知ってるって言うの?
怒りに震えながら、一方で、彼女の瞳から視線が逸らせないのは、どこかでチカチカ、警告灯が瞬いてるような気がするのは……なぜだろう。
——どの程度、信頼できるのかな。その『彼』は。
やめて。
やめてよ……!
「チェン様、こちらでしたか。お探しいたしました」
落ち着いた声が、ずぶずぶと思案に沈んでいく私を救い上げた。
近づいてきたのは、都築さんだった。
「スタッフから言付かりました。予約が急に空いたとのことで、ご希望のエステコースが、今でしたら待ち時間なしでお受けいただけるそうです」
「あら、そう。よかったわ、ありがと」
パッと顔を綻ばせたその人は、私をあっさり突き放すと。
ヒールの音を響かせ、遠ざかっていく。
私は言葉もなく、腕についた爪痕を撫でさするしかなかった。