カボチャの馬車は、途中下車不可!?
後ろへ流した前髪に指を通しながら、視線を下げていた都築さんは、やがて諦めたように私へと向き直った。
「ここだけの話に、していただけますか」
「……はい」
「最近では、確か半月ほど前でしたか、先月のプレミアムフライデーの夜です。あの日はホテルでイベントがございましたので、よく覚えております」
コクッと喉の奥で不快な音がした。
先月の、プレミアムフライデー……
覚えてる。
彼に手料理をふるまった日。
ライアンが、私の家に来て、そして電話が来て……帰っていった日。
——部屋で会おう。都築に言えば、鍵開けてくれるから。先に入っててくれていい。
——気が済むまで付き合うから、それでいいだろ? 朝までだってお相手するよ。
あの電話は、彼女からだったんだ。
そして2人は、一緒に過ごしていた……
「どうか落ち着いてください、真杉様。二人きりというわけではないかも——」
後の言葉はもう、耳には届かなかった。